2011.11.30 Wed
『猫かぶり姫』 大団円
お城に帰ったたま王子は、
「王子よ。黙って城を抜けるでない!それに氷に触れる時は手袋をする様にと、
あれほど言っておいたではないか。」と、
霜焼けになった前足の手当てをされながら、女王様に叱られていました。
「すいません、母上。でも僕、どうしてもあのぞうりが溶ける前に、あのひとに会いに行きたかったんです。
それに手袋をして氷を触ったら、毛糸が付いてきれいなまま返せないでしょ?」
結局あの後すぐに溶けてしまったぞうりでしたが、スエデレラの手に返せたたま王子は、それで満足でした。
息子のけなげさに胸を打たれ治療の手を止めた女王は、
「たま王子・・。いつかきっと、 そなたの良さが分かる女性が現れようぞ。」と、
そっと肉球を包んで励ますのでした。
しかしその予想に反し、どの女性と付き合ってもスエデレラ以上の魅力を感じない王子は、生涯結婚することなく余生を過ごす事となります。
国で一、二を争うふま絵師とくるねこ絵師に描かせたスエデレラの肖像は、終生王子の寝室に飾られ、その後は国宝となったのでした。
一方、お裁縫の修行に出されたスエデレラは、
見る間に腕を上げ、持ち前のセンスを生かしてブランドを立ち上げます。
その名も、〈マダム・ド・スエ〉。
創立パーティのスピーチで、彼女はこんな風に語りました。
「私がファッションに目覚めたきっかけは、幼い日に見た、一枚の姉のドレスでした。
その独特なデザインは幼かった私の心をも魅了し、夢中で手に取る内に、うっかり爪で傷つけてしまったのです。謝る私を姉は笑って許してくれ、母は素早く綻びを直してくれました。
その魔法の様な手つきを見て、いつか自分もああなりたい、そして姉にあの時以上のドレスを作りプレゼントしたい。それがこのブランドを設立する原動力となりました。」
多少脚色されてはいるものの、その言葉を聞いた誰もが感動します。
しかしおめでたい席で気が緩み、つい酔いの回った姉姫によって、
「あれは実はねぇ・・」と真相を暴露され、その一件から〈猫かぶり社長〉とあだ名されたスエデレラは、
更に出不精になってしまいます。
そして対外的な仕事は全てめわ姫と姉姫に任せ、家にこもって次々と新しいデザインを発表し、
〈滅多に人前に出ない、神秘的なカリスマデザイナー〉と脚光を浴びるのでした。
その後もスエデレラとめわ姫、姉姫は、時にケンカしつつも、末永く幸せに暮らしたそうです。
また、王子とのダンスをもとに作られた戯曲では、
ブランドの設立と王子との恋の狭間で揺れ動くスエデレラの葛藤がテーマにされており、多くの女性の涙を誘ったのでした。
ねんねこ国では今も、〈猫をかぶった女性は幸せになれる〉と言う言い伝えが残っているそうです。
(了)
これにて「猫かぶり姫」は御終いです。
長い間、ありがとうございました。
このお話は、にゃんこさんが、ずっとこのブログやHPをご覧くださっていたからこそ
出来たお話だと思います。あのエピソード、このエピソード、私自身が懐かしく思い出されて
とてもうれしく感激ひとしおでした。ブログとは違う、HPを作っているような気持ちにもさせてもらいました。
何より気に入ったのが、ラストが王子様と結ばれてハッピーエンドではなく
(たまさん、ごめんよ)
一人の女性として自立し成功を収めるサクセスストーリーになっていること。え゛?
新たな童話の出現です。さぁさぁさぁ、これからは、こうでなくっちゃ。
皆様、にゃんこさんに盛大な拍手を!!!!!
そして、登場してくださった皆様ありがとうございました。
| すえこ | 17:25 | comments:31 | trackbacks(-) | TOP↑